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よくある質問

Q1.家族信託を利用するにあたり、公正証書は必要ですか

法律的には必ずしも公正証書を用いる必要はありません。しかし、公正証書で契約書を作成しておくことで原本紛失のリスクがなくなり、契約の有効性も担保さ れるため、家族信託契約の締結には公正証書を用いるべきです。

Q2.どんなものが信託財産を組み込めるのですか?

法律上は、信託できる財産に特別の制限はありません。ただし、家族信託は本格的に普及が始まってからまだ間もないこともあり、実務に対応できる銀行・証券会社などの金融機関がまだ少ない状況です。そのため、信託可能な財産は、実際のところ「不動産」「現金」「未上場株式」に限られているのが現状です。

かつて成年後見制度の開始当初も対応可能な金融機関が少ないという問題がありましたが、現在ではその多くが対応しています。家族信託も、今後のニーズの盛り上がりを受けて対応可能な金融機関が増えていくと思われます。

Q3.家族信託を利用するにあたり、家族の承諾は必要ですか?

法律的には財産を託す人(委託者)と財産を託される人(受託者)以外の家族の同意は不要です。(委託者と受託者の同意さえあれば、信託契約は成立します。守られる人(受益者)の合意も不要です)しかし現実的には、親の財産管理や資産承継について、家族全員による理解・意識共有がなければ、スムーズな信託事務処理は難しいといえるでしょう。そのため、家族信託の利用にあたっては、契約当事者以外の家族も含めた話し合いを行うことが望ましいといえます。

Q4.元気なうちはまだ自分で不動産を管理したい。認知症になったら信託契約の効力を生じさせられる?

条件付きで契約の効力を生じさせることは法律上は可能です。

家族信託でも同様で、委託者ご本人が認知症になった時点で家族信託の効力が発生させるとする契約は理論上できなくはないです。

ただ、いつの時点で認知症になるかは定かではありませんし、その判断をする医師の診断をいつ受けるかによっても左右されてしまいます。そのようないつ生じるかわからないあいまいな条件では契約関係は不安定になり、金融機関が関係する場合はまず金融機関が了承してくれません。

従いまして、効力が発生する年月日(条件ではなくこの場合は期限となります。)を定めておくといったことは良いですが、「認知症になったら」というような条件を設定することはお勧めしません。

Q5.遺言を書いておけば家族信託しなくていいの?

遺言が効力を発生するのは、遺言者がお亡くなりになってからです。
従いまして、遺言書内で全ての財産を記載していたとしても、生前に認知症になってしまってから亡くなるまでの間、資産が凍結することになります。
つまり、完全な生前対策とは言い難いのです。

また、家族信託は、全ての財産を信託財産に含める必要はなく、認知症等で資産が凍結される恐れのある「土地・建物」や、「会社の株」など、特定の財産だけを対象にすることが多いです。こうすることで、生前に認知症になっても信頼できる家族が財産を管理し、資産凍結の恐れは無くなります。

さらに、家族信託で指定した財産については、信託契約書内で「帰属権利者(財産を最終的に取得する方)」を指定するケースがほとんどですので、その部分については遺言書に代わる役割を果たします。

一方で、信託財産として指定しなかった部分の財産については、依然としてご本人様の固有財産のままですので、別途遺言を作成し、財産の承継先を指定する必要があります。

「家族信託」と「遺言」を2つ併せて作成する事で、よりお客様のニーズにあった財産承継が可能になります。

弊所は遺言書作成も併せてお客様のニーズに合ったプランをご提供させて頂きますので、是非お早めにご相談ください。

Q6.家族信託を使えば「遺留分」は気にしなくていいの?

結論から言えば、法律上は可能であっても、弊所では実務上遺留分を考慮せずに信託契約を締結するのは難しいとお答えしております。

 信託契約締結の際に、受益者に相続が発生するたびにあらかじめ委託者が指定しておいた受益者に順次移転することを決めておき、受益権をいったん委託者に戻るスキームを作っておくことで第一次相続以外は遺留分の権利が発生しないとすることも考えられてはいますが、いまだ裁判所の結論が確定しておりません。
 
 また、家族信託では金融機関で信託口口座を作り、そこに信託財産を移して管理していくことが多いですが、信託口口座を開設するにあたり、金融機関は信託契約書を吟味します。そこで、遺留分を侵害した信託契約であっても、その遺留分権利者に対して手当のできる財産が確保されていることが説明できればいいですが、そうでない限り金融機関は紛争含みになる口座開設に応じてはくれません。

 家族信託は長期にわたり継続して効力が生じていく契約です。ひとたび紛争が生じてスキームが停止すると信託契約をめぐる関係者間で思わぬ付随的なトラブルも生じかねません。
従いまして、家族信託契約にあたり、遺留分を侵害する契約をする場合は遺言や保険などを活用して遺留分権利者に対して手当をしながらスキームを立てていくことが必要になります。

Q7.成年後見制度と家族信託との違い

双方とも本人の財産管理を第三者が行う点で同じですが、その制度趣旨から相違があります。

 成年後見制度の趣旨はあくまで判断能力が弱まった後の本人の財産保護であるため、家庭裁判所によって選任された成年後見人等は、あくまで本人のためにしか財産を使うことができないという制約が生じます。この点は任意後見契約を締結した場合でも基本的には同様です。

 そのため、例えば株などの運用や相続税の節税対策、納税対策としての不動産の処分等は本人の財産保護というよりも、将来の相続人の方のためという意味合いが強くなるため成年後見制度ではなかなか難しいというのが実情です。

 これに対して、家族信託は本人が元気なうちに契約という形で自分の意思で行うという前提があるため、信託契約に定めておけば資産をリスクの伴う高利回り商品で運用するとか、相続税の節税・納税対策として不動産の処分、リフォーム、賃貸住宅の建築等なども財産管理を任された受託者の責任と判断において行うことが可能となります。

 ただ、成年後見は本人の判断能力が失われた後でも利用できる制度ですが、家族信託は契約行為ですので、本人が財産の管理処分に関して判断能力が失われた後だと利用できないということには注意が必要です。

Q8.代々続いていた土地ですが、子どもがいません。どのように今後承継していけばよいですか?

何もしないでいると、例えば、本人の相続人に配偶者と兄弟がいる場合、財産の4分の3を配偶者の方が承継します。

そこまではいいとしても、その配偶者が亡くなればその配偶者の兄弟等に代々続いた財産が承継されることになります。

そうなれば、「先祖代々の土地が他人の家にいってしまう」ということにもなりかねません。

そこで、遺言を書いておくということがまず考えられます。

例えば、遺言で本人の弟に代々の土地を承継させることにしておけば、とりあえず配偶者の家系に代々の土地が承継されるのを防ぐことが、ある程度は可能です。

ただ、遺言では、さらにその次の代までも決めることはできません。なぜなら、遺言で財産を承継された人の意思まで拘束することはできないからです。

また、弟が弟の配偶者より先に亡くなった場合、その配偶者の家系に先祖代々の土地が承継されることも考えられます。

また、遺留分の問題も発生しかねません。

家族信託では、その財産による利益を誰が受けるか(受益者といいます)を自由に決めることができます。

しかも、一代限りではなくどの順番で誰を受益者とするかを決めることができるため、遺留分の問題が生じないようにうまく順番を決めれば従前の「家督相続」のようなことも実現できることになります。

例えば、受益者を、自分が亡くなった後は、妻に、その次は甥に、甥が亡くなった後はさらにその子に、という感じで順番を決めることができます。

このように、遺言ではできないことが、家族信託では実現することができるのです。

Q10.受託者が暴走した場合にはどうなるか?

受託者は家族信託契約のスキームの中でも、委託者の財産を預かり、受益者のために管理するという責務を負った重要なキーパーソンです。

そして、家族信託の当事者である受託者になるのは一般の方が大半です。

家族信託の事務処理を問題なくやってくれる方であればいいのですが、仮に暴走してしまい、大切な財産を自己のために使い始めてしまったら、せっかく結んだ契約も本末転倒となってしまいます。

何らかの方法で受託者を監視したり、責任を制限したりすることは契約上自由なのです。

受託者を監視する「信託監督人」、受益者をサポートする「受益者代理人」などを置き、受託者が適正な仕事をしているかのチェック体制を設けることや、「同意権者」(受託者による信託財産の管理・処分等についての同意をする者)、又は「指図権者」(受託者による信託財産の管理・処分等について指図する者)などを置くことにより、受託者の行為を制限・監督することが出来るようになるのです。

これらは、受託者の身勝手な暴走を防ぐためにも重要な仕組みであり、それと同時に受託者を余計な責任から守ることも出来るのです。

家族信託では、信託の目的を達成できるように、キーパーソンである受託者に対する相談や支援ができる体制を整えることが重要になってきます。受託者になる方は、一人で全てを背負い込まず、専門家やご家族のサポートを受けながら、関係当事者全員で信託事務を遂行するようにしていけると、素晴らしい「家族信託」になるのではないでしょうか。

Q11.家族信託は、認知症になってからではダメですか?

これから家族信託契約をお考えになっているお客様のよくあるご意見として、「自分が認知症になってから契約を考えればいい」という声をお聞きします。

単刀直入に申し上げますと、そもそも家族信託契約は、自身が認知症等の判断能力を喪失する前に、事前に安心して任せられる親族の方(受託者)と契約し、将来的に自身が認知症になった場合に様々な手続等を代行して任せるという仕組みなのです。

従いまして、契約の締結は早ければ早いほど良いですし、一旦認知症の症状が出始めると、判断能力は日に日に失われてしまい、公証役場での契約の締結の際に公証人の先生から、「診断書」を求められるケースも多いようです。

ご相談の際に、既にご自身のお名前も覚えておらず、家族信託が行えなかったお客さまも大変多いです。

昨今はテレビでも特集されるくらいに、一般の方の認知度は上がってきている家族信託ですが、以上から、少しでも興味をお持ちのお客様はお早めに専門家にご相談されることをお薦めします。

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